簿記3級の試験に合格するためには、配点にも注意して効率よく勉強をする必要があります。
簿記の試験は100点満点中、70点が合格ライン。
70点以上であれば、100点を取ろうが、70点ギリギリであろうが、合格できます。
学校や塾の試験では、他の人よりも1点でも多く点数を取らないと成績が上がらなかったり、順位が下がったりします。
ですが、簿記の試験は他の受験生と競争して上位を目指す試験ではありません。
そのため、最低ラインである70点を切らないよう効率よく勉強を進めるだけで充分に合格圏内に入れるでしょう。
100点を目指すための勉強をすると、どうしても完璧を目指す必要があります。
ですが、完璧を目指す勉強法は資格試験にパスすることを目的とする場合、逆に効率の悪い勉強法であったりします。
そこで、ここでは100点を目指すための勉強法ではなく、配点にフォーカスして効率よく合格を目指すための方法をお伝えします。
目次
簿記3級講座の比較表
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まずは簿記3級の配点比率を知って、対策を練る
簿記3級の試験は100点満点中、70点が合格ラインとなっています。
試験時間は60分で、この制限時間の中で商業簿記の大問を3題解かなければなりません。
これらのルールはネット試験(CBT方式)でも、統一試験(紙の試験)でも、同一の決まりとなっています。
参考:簿記 試験科目・注意事項 | 商工会議所の検定試験 (kentei.ne.jp)
このルールを踏まえたうえで、どんな問題が出題され、どのように配点が振られているのかを分析してみましょう。
第1問 仕訳問題(45点)について
第1問では、仕訳に関する問題が15題出題されます。
計算すると、1題あたり3点となります。
たかだか3点と思う人もいるかも知れませんが、全問正解すると45点。
そのため、もし全問正解すると100点満点中、45点を確保でき、この第1問だけでかなりの得点を稼げます。
70点の合格ラインまで、あと25点とればOKなので、この仕訳問題を解ければ、合格の二文字により近づけるでしょう。
よく、「仕訳を制する者は簿記試験を制す」と言われたりしますが、その理由がこの配点からも分かります。
仕訳のルールが分からないと、この次に続く、第2問や第3問を解くことはほぼ不可能です。
仕訳は、簿記の単元の中でも基本中の基本なので、絶対に習得して、スラスラと解けるようにしておきましょう。
第2問 勘定記入問題(20点)について
第2問の勘定記入問題は、合計20点となります。
配点比率だけ見ると、満点を目指しても20点にしかならないので、優先度は第1問よりも下がります。
また、第2問の問題は第1問の仕訳問題のようにパターンが決まっている訳ではありません。
そのため、問題をきちんと読み込み、その場で対応する能力が問われます。
なお、後述する第3問については決算整理問題がメインとなるので、第1問と同じように、ある程度、解法パターンが決まっています。
このことから、簿記3級の第1問から第3問の中で、第2問の問題が人によっては1番解きづらいかも知れません。
第2問に関しては、もともと配点比率自体が低いので、どうしても解くのが苦手という場合、「時間に余裕があればやる」という戦略も必要となるでしょう。
第3問 決算整理問題(35点)について
第3問の問題は、合計で35点となっており、第1問に次いで配点が高くなっています。
特に、損益計算書や貸借対照表を作成する問題がメインとなっているため、総合的な簿記の能力が必要。
仕訳ができるのはもちろんのこと、基本的な勘定科目、資産・負債・純資産・収益・費用についてのホームポジションはしっかりと把握していなければなりません。
なお、ホームポジションについては後ほど詳しく説明します。
特に、どの勘定科目が損益計算書に記入されるのか、あるいは、貸借対照表に記入されるのかは、絶対に分類できるようにしておきましょう。
特に、決算整理問題では以下のような作業をおこなう必要があります。
- 現金過不足の処理
- 有形固定資産の減価償却
- 貯蔵品勘定への振替
- 当座借越勘定への振替
- 貸倒引当金の処理
- 売上原価の計算
- 消費税の納付額の計算
- 費用や収益の前払いや前受け
- 費用や収益の未払いや未収
- 法人税等の計上
これらの決算整理をおこなったうえで、損益計算書や貸借対照表を作成することになります。
自信のないところ、まだ理解が浅いところなどは、繰り返し練習して無くしていくようにしましょう。
本試験では配点の高い問題から解くのがセオリー
ここまで第1問から第3問までの配点と概要について見てきました。
ここで配点の大きい順に問題を整理してみます。
- 第1問:45点
- 第3問:35点
- 第2問:20点
見てわかると思いますが、得点の割合が大きい問題から解くのがセオリー。
すると、「第1問 → 第3問 → 第2問」の順に解くのが最も効率のよい解き方となります。
特に第1問は全問正解すれば、100点満点のうち、ほぼ半分の45点を得られます。
そのため、簿記3級の試験対策では、まずは仕訳を完璧にできるよう反復練習をしなければなりません。
【前提】必ず手を動かして問題を解いてみることが大事
簿記3級の問題はきちんとテキストを読み込めばOKというものではありません。
テキストを読むのも大事ですが、簿記試験対策の肝は、いかに多くの問題を反復して解いたか、という点が最も重要です。
仕訳にしても、勘定記入にしても、決算整理についても、ただ漠然とテキストを読んだだけでは問題を解けるようにはなりません。
何度も繰り返し同じ問題を解きながら、簿記独特の癖やルールをしっかりと身体に染み込ませる必要があります。
決して、テキストだけ読んで、ぶっつけで本番の試験に挑むことが無いようにしてください。
このあと、第1問から第3問までのポイントについて解説していきますが、すべて自分の手を動かして問題を解くということを前提にしています。
なお、説明の順番は配点の割合が高い順に見ていきます。
「第1問(45点) → 第3問(35点) → 第2問(20点)」
それでは、それぞれの大問の特徴について詳しくみていきましょう。
なお、簿記検定では過去問の公開は禁止されているので、問題演習をするなら問題集を使う必要があります。
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第1問の仕訳問題は絶対に解けるようにする
第1問の問題は難問奇問のオンパレードという訳ではなく、いわゆる一般的な仕訳の問題が出題されます。
この第1問で満点の45点に近い点数を取れれば、簿記3級合格まではあと一歩。
しっかりと対策をすれば、仕訳問題については、そこまで身構える必要はありません。
仕訳のルールを理解する
ここで、仕訳のルールについて簡単に触れておきます。
仕訳とは、取引を勘定科目と金額のみで表し、帳簿の左側と右側に分けて記入する方法のこと。
帳簿の左側を「借方(かりかた)」、右側を「貸方(かしかた)」と呼びます。
ちなみに、借方と貸方という言葉に、特に意味はありません。
この点についてはそのまま暗記してもOKですが、そのあとの仕訳ルールは暗記ではなく、きちんと理解して対応する必要があります。
一般的な仕訳の流れは以下の通り。
- 仕訳に必要な5つの要素の選択 ※5要素については後述
- 借方に記入するか、貸方に記入するかを考える
- 対応する勘定科目の選択
基本的には、上記のような流れで仕訳をおこなっていけばOKです。
そして、仕訳については1つの取引を借方と貸方に分けて記入するため、必ず左右の数字の合計が一致します。
勘定科目とホームポジションの把握
さきほど触れた、仕訳に必要な要素は次の5つに分類されます。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 収益
- 費用
また、それぞれの要素にはホームポジションと呼ばれる場所があり、資産と費用は借方側に、負債・純資産・収益は貸方側に記入するという決まりがあります。
資産・負債・純資産について
例えば、現金や商品などの資産が増えた場合は、帳簿の左側である借方に記載をします。
逆に、借金などの負債は帳簿の右側である貸方に記載。
この資産と負債の差額が純資産となり、プラスになったりマイナスになったりします。
収益・費用について
次に、収益と費用についても簡単に見ていきましょう。
売上や預金などの受取利息は収益となり、帳簿の右側である貸方に記載されます。
一方、仕入や水道光熱費などは費用となり、帳簿の左側である借方に記載。
この収益や費用の差額が、プラスになったりマイナスになったりします。
なお、収益と費用についての差額がプラスの場合は当期純利益、マイナスの場合は当期純損失という名称になります。
それぞれの勘定科目が資産・負債・純資産・収益・費用の、どの要素に分類されるのかは必ず把握しておきましょう。
第3問の決算整理問題対策にも時間をかける
第1問に続き、第3問も35点という大きな配点を占めるため、第3問についても相当の時間を掛けて対策する必要があります。
特に第3問は決算整理問題がメインとなるため、損益計算書や貸借対照表の作成といった簿記の総合的な能力が問われます。
簿記全体の流れを把握する
第3問では、決算整理の仕訳をして損益計算書や貸借対照表を作成する問題がメインとなるため、自分がいま、どこの何の作業をおこなっているのかを常に意識しておく必要があります。
なぜなら、簿記取引全体の流れをきちんと把握しておかないと自分がいま何をやっているのか分からなくなってしまうからです。
ここで、簡単に簿記取引全体の流れを記しておきましょう。
- 取引の発生
- 仕訳をする
- 総勘定元帳に転記をする
- 試算表をつくる
- 決算整理
- 損益計算書と貸借対照表の作成
- 帳簿を締め切る
※7番までいったら、再び1番に戻る
第3問は、この4番〜7番の項目についての問題がメインとなります。
また、単に仕訳をするといっても、様々な意味があります。
- 試算表を作るための仕訳なのか
- 決算整理事項を確認するための仕訳なのか
- 損益計算書や貸借対照表を作成するための仕訳なのか
このように、きちんと自分の頭の中で整理しておかなければなりません。
単に仕訳だけしていると、自分がいま何のために目の前の作業をおこなっているのかが分からなくなってしまいます。
問題を解くときは、必ず簿記取引全体のどの部分の作業をおこなっているのかを常に把握しておきましょう。
各帳簿の意味をきちんと理解する
第3問で頻出の帳簿として、以下のようなものが挙げられます。
- 試算表
※合計試算表、残高試算表、合計残高試算表
- 精算表
- 損益計算書
- 貸借対照表
- 総勘定元帳
それぞれの帳簿にはもちろん意味があり、重要な役割を果たしています。
これらの表の役割をきちんと理解していないと、思わぬところで失点してしまうでしょう。
それぞれの表の特徴を簡単に記しておきます。
なお、試算表や精算表などの問題については、部分点があります。
合計が間違っていたとしても、個々の数値が合っていれば、そこで点数が稼げます。
試算表
仕訳から総勘定元帳に転記する際にミスが無かったかどうかを確認するための表のことで、合計試算表、残高試算表、合計残高試算表の3種類があります。
精算表
決算整理前の試算表から決算整理をおこなって、損益計算書や貸借対照表を作成するまでの過程をまとめた表のことを言います。
損益計算書
一会計期間の損益を計算した表のことを指し、企業の経営成績を明示するための表のことを言います。
貸借対照表
決算日時点の資産・負債・純資産をまとめた表のことを指し、企業の財政状態を明示するための表を言います。
総勘定元帳
必ず作成しなけらばならない主要簿と呼ばれるものの1つで、各勘定の口座をまとめた帳簿のことを言います。
第3問の問題を解くときは、簿記全体の流れをみて、どの段階の、どの帳簿の、どの作業をおこなっているのかを常に把握しながら解くようにしましょう。
第2問の勘定記入問題は時間に余裕があったら
最後に、第2問について解説をしていきます。
第2問については配点が20点しかありませんので、もし試験当日までに時間がない場合、第1問や第3問の対策の方に時間を割くべきです。
時間が無い場合の戦略としては、第2問は余力があったら取り組むくらいのスタンスで挑むしかありません。
極端な話、万が一、第2問が0点でも第1問と第3問だけで合計70点〜80点を取れば、簿記3級の試験には合格できます。
ただし、第2問の問題も簿記全体の取引の中の一部なので、簿記の仕組みを理解するためには、必ず学習する必要があります。
また、第1問と第3問だけで70点〜80点の点数を目指すというのはあまり現実的でないため、最初から第2問を捨てるという勉強方法は絶対に避けてください。
基本は、きちんと第1問から第3問までの勉強をしたうえで、どうしても時間が無い場合のみ、第2問の対策についての時間を少し削ってもよいという温度感になります。
主要簿と補助簿の整理
第2問を攻略するためには、主要簿と補助簿の整理についてが必須。
たとえば、取引が発生したときに使用する会計帳簿には以下のようなものがあります。
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- 商品有高帳
- 固定資産台帳
- 当座預金出納帳
- 小口現金出納帳
- 現金出納帳
- 仕入帳
- 売上帳
- 売掛金元帳
- 買掛金元帳
- 受取手形記入帳
- 支払手形記入帳
特に補助簿については、すべての会計帳簿を利用している企業の方が珍しいかも知れません。
ですが、簿記3級の試験対策としては必ず全ての帳簿の特徴を把握しておく必要があります。
伝票についての整理
もう一つ、第2問に頻出するものとして「伝票」と呼ばれるものがあります。
伝票は、仕訳帳の代わりに取引を記入する紙片のこと。
取引を伝票に記入したら、総勘定元帳へ転記します。
取引があまり多くない場合は仕訳帳を使用し、取引がそれなりに多い場合は仕訳帳の代わりに伝票を使う場面が多くなるでしょう。
一方、取引量があまりにも多くなると伝票の数も増えるので、総勘定元帳に記入する前に「仕訳日計表」というものを使用し、転記ミスを軽減する方法が取られたりします。
仕訳日計表は、伝票に記入した1日分の取引を勘定科目ごとに集計した表のこと。
もちろん、借方と貸方の合計は一致します。
配点比率の高い単元から対策をおこない、合格点を目指そう!
ここまで見てきたように、簿記3級の試験を配点という観点から見てみると、やはり配点比率の高い問題から解いていくのがセオリー。
特に第1問の仕訳問題では絶対に高得点を目指したいところです。
試験当日、第1問の問題がスラスラと解けていれば、その次に配点の高い第3問の決算整理問題も、時間に余裕を持って落ち着いて解けるでしょう。
特に、第3問は決算整理についての総合的な実力が試されるため、事前の反復練習が欠かせません。
そして、第2問の勘定記入の問題については、第1問や第3問のようにパターンに当てはめれば解けるという訳ではないので、得意・不得意が一番出そうな部分でもあります。
第2問にどこまで力を入れるかは、試験直前までにどの程度、3級全体の対策ができているかで判断しましょう。
第1問から第3問までの出題傾向や配点の割合を知った上で簿記3級の勉強を進めていけば、どこに一番力を入れればいいのかが一目瞭然となります。
日商簿記3級のそれぞれの問題の配点の割合を把握して、効率よく合格を目指していきましょう!
簿記3級講座の比較表
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